In the Rough

第2回

行程の骨格は1年以上前に、中身は直前まで決めなかった

出発の2か月前、キャセイパシフィックの便がキャンセルになりました。理由は戦争です。

2026-09-02熊谷将一郎約5分

生活に AI を入れると何ができるか、を試している記録です。前回は現地での調べものが検索から対話に変わった話でした。今回はその前段、行程をどう組んだかです。

JAL のマイルで取り直しました。ただ、元の順番には戻せません。東京からドバイに入って、ドーハを経由してウィーンへ——という予定でした。それが、ドーハからウィーンへ向かう形に変わります。ドーハへはタイ経由で入り直しました。

1年以上前に固めたはずの骨格が、出発の2か月前に動いています。

それでも旅そのものは組み直せました。入口の1区間を引き直しただけで、そのあとの30日には手を入れていません。組み直しがここで止まったのは、決めてあったものと決めていなかったものが分かれていたからだと思っています。行程は一度に組んだものではありませんでした。

夜明けのドーハ。高層ビル群の向こうに湾と朝焼けの空が広がる
ドーハ。ドバイを通らない形に引き直して、タイ経由で入りました。ここから30日が始まります。

最初に決めたのは、外せない点

行程づくりは、都市の一覧からではなく、外せない点から始めました。友人に会うニューヨーク。ディズニーに行くオーランド。先にピンで打つ場所を決めて、全体のプランはそのあとです。

点が決まると、線の引き方が絞れます。移動距離と時間——体と旅程への負荷——を見ながら都市を落としていって、区間ごとに直行便か経由便かを比べる。ワンワールドとスターアライアンスのどちらが今回の点をよく繋げるかを比べて、ワンワールドにしました。

行程の2層構造 東京 ドーハ ウィーン マドリード モルディブ バンコク 東京 あとから編んだ(陸路中心・直前まで可変) 両端は1年以上前に固定
主要な地点だけを描いています。点線の区間に、グリンデルワルト・アムステルダム・パリ・ロンドンが入ります。サンセバスティアンへは、マドリードから別買いの航空券で往復しました。この図は取り直したあとの形です。当初は東京からドバイに入って、そこからドーハを経由してウィーンへ向かう予定でした。
1年以上前世界一周航空券で
航路を確定
10か月前山の宿を確保早いほど安かった
2/9出発1週間前にできていた
地区別の予定表

骨格は1年以上前に買った

その航路を、世界一周航空券として出発の1年以上前に確定しました。長い旅なので、途中で一度日本に戻るかどうかも論点でした。世界一周券の航路に帰国を組み込む形と、帰国と再出発の便を別に取る形を比べて、途中帰国便を別途取ることにしました。旅はこれで前半と後半に分かれます。この30日は、その後半です。

先に固めたのは、長距離の飛行機がいちばん動かないものだからです。日付を動かすと値段が大きく動いて、席も無くなっていく。逆に欧州の中は鉄道で繋がっていて、選択肢が多い。決めるのを遅らせても失うものが少ない区間です。後半で言えば、ドーハから入って、マドリードから南へ抜けて、バンコクから帰る——ここまでが骨格で、ウィーンからマドリードまでの間は、その時点では白紙でした。

その「いちばん動かないもの」が動いたのが、冒頭の便のキャンセルです。動かないと思っていたほうが動いて、白紙にしてあったほうは動かずに済みました。値段と席が理由で先に固めたのですが、固めたことが理由で動かなくなるわけではありません。ここは読み違えていました。

次に、席と宿を早い順に押さえた

骨格の次に押さえたのは、人気があって消えるものです。欧州の中は陸路中心にして、夜行列車を2本。ウィーンからチューリッヒへ、チューリッヒからアムステルダムへ。ナイトジェットです。寝ている時間に移動が済むので、宿2泊ぶんが移動と重なって、昼の時間が丸ごと残ります。人気の便なので、ここは早めに確保しました。

車窓のことは書いておきます。夜行で朝を迎えて、カーテンを開けるとスイスに入っています。そこからグリンデルワルトへ向かう列車では、高原がずっと続きます。移動が移動で終わらない区間でした。

列車の窓から見た草原と山。奥に湖と山並みが見える
グリンデルワルトへ向かう車窓。夜行で朝に着いて、そのまま乗り継いだ先です。

戻ってきたチューリッヒで、もう1本の夜行に乗ってアムステルダムへ。そこから先は鉄道パスと Eurostar でパリ、ロンドンへ。ロンドンからは別買いの航空券でマドリードに繋いで、骨格に戻ります。

チューリッヒの川辺。夕方の空の下に対岸の街並みと橋が見える
チューリッヒ。夜行を2本とも、この街で乗り換えました。

宿も同じで、早いほど安い場所があります。山岳リゾートの宿は約10か月前、2025年9月に押さえました。こうして骨格の上に、値動きが大きいもの・席が消えるものから順にプロットしていきました。

日付ではなく、曜日から置いた予定もある

中身を詰める段階では、都市ごとの予定を曜日から置きました。欧州は日曜に店が閉まって、月曜に美術館が閉まります。だから街を歩く日は平日に、山は日曜に。スイスの日曜はユングフラウヨッホに登る日にしました。山は曜日で閉まりません。

雲海の上に出た岩と雪の稜線。眼下に谷が見える
日曜に登ると決めていた場所。ここだけは、何曜日でも開いています。

食べるものも、この曜日の並びで決まりました。ウィーンではシュニッツェル、スイスではチーズフォンデュ。予定表に書いてあったのはこの2つだけで、あとはその日に決めています。

大きなウィーン風シュニッツェルの皿。レモンとベリーのソースが添えられている
ウィーンのシュニッツェル。皿からはみ出しています。

決めなかった部分は、最後までほぼ白紙のままだった

出発1週間前の準備の記録が残っています。地区ごとの予定表(食事と観光のしおり)は、9地区のうち完成していたのは2つ。スイスが作業中で、残り6地区は未着手のまま出発しました。旅の後半のしおりは、旅をしながら作っています。

それで困らなかったのは、骨格と席と宿が先に固まっていたからです。直前の変更は差し替えで済んで、全体を組み直す作業が発生しません。実際、30日のあいだに骨格側で起きたことは2つだけでした。航空会社から時刻変更の通知が1回来て、最終的に元の時刻に戻ったこと。帰国日が計画から1日ずれたこと。どちらも中身には波及しませんでした。

入口の1区間がまるごと無くなっても同じでした。引き直したのは骨格の一部だけで、その上に載っていたものは載ったままです。

この組み方には、道具がない

この組み方——骨格、席と宿、予定の中身、の3層——は、やってみると道具に恵まれていません。骨格は航空券の予約の中に、席と宿は予約サイトの中に、中身はしおりと表計算の中に、ばらばらに置くことになります。私は自作のしおりと AI との対話でつなぎました(前回に書いたやり方です)。

セントパンクラス駅のホーム。ガラスとアーチの大屋根の下に列車が並ぶ
ロンドン、セントパンクラス。3つの層は、それぞれ別の場所に置かれたままです。

「先に固めるもの」と「直前まで決めないもの」を最初から分けて持てる道具があれば、この組み方はもっと楽になるはずです。便がキャンセルになったときに、どこまで壊れるのかが先に見える、というのも同じことだと思います。それがいま私が Sekairo を作っている理由のひとつです。ここでは作っている側の判断だけを書いていきます。

次の旅で、先に固定するものと、直前まで決めないもの。あなたはどこに線を引きますか。

あなたはどうしていますか

出典行程と日付は当時の行程記録から。しおりの進捗(9地区中2完了)は出発1週間前(2026-07-12)の準備ログから。骨格の決め方(外せない都市・アライアンスの比較・途中帰国便)は計画時の本人の記録による。出発2か月前の便のキャンセルと取り直し(当初の東京→ドバイ→ドーハ→ウィーンを、ドーハ→ウィーンに引き直した)、車窓と食事は本人の記憶による

作っているものSekairo(自分で開発しています)

書いていないこと同行者、宿泊先、支出額、便名、予約番号

最終更新2026-09-04(出発2か月前の便のキャンセルと経路の引き直し、夜行の車窓、食事を追記。写真を6枚追加)